実家の玄関まわりが気になり始めるきっかけは、人それぞれです。鍵が古いまま何十年も使われている、インターホンが音だけで相手の顔が見えない、知らない業者らしき人が来ても親がとりあえずドアを開けてしまう——。どれも「今すぐ危ない」という話ではありませんが、離れて暮らしていると小さな不安が積み重なりやすい場所でもあります。
この記事では、玄関まわりの防犯を「鍵をどう守るか」と「訪問者にどう応対するか」という2つの問題に分けて整理し、宅配の受け取り方まで含めて、どこから手をつけられるかをまとめます。防犯全体の優先順位については実家の防犯、何から始めるかガイド、窓まわりの対策は窓の防犯と転落防止で扱っているので、あわせて参考にしてください。
「侵入」と「訪問者」は別の問題
玄関の防犯というと鍵の話に意識が向きがちですが、実際には性質の異なる2つの問題が同居しています。ひとつは、鍵という物理的な防御力の話。もうひとつは、玄関先に来た人にどう応対するかという、家族の判断や習慣の話です。前者は機器や設備で底上げできますが、後者は「出る前に確認する」といった日々の行動が関わってくるため、対策の仕方が変わってきます。まずはこの2つを分けて考えると、実家の状況に合わせて優先順位をつけやすくなります。
鍵まわりでできること
鍵は、建てたときのまま何十年も交換していないという実家も少なくありません。古い型のシリンダー錠の中には、比較的簡単な工具で開けられてしまうものがあることが知られており、鍵を新しい型に交換するだけでも防御力を上げられます。加えて、扉に補助錠をもう一つ追加するのも有効な手段です。1つの扉に鍵が2つあるだけで、開けるのにかかる手間と時間は増えます。
内側のつまみを外から回して開ける「サムターン回し」という手口への備えとしては、つまみにカバーを付けるタイプの対策部品があります。あわせて、合鍵を何本作って誰が持っているか把握できているかも、この機会に確認しておきたいところです。以前に頼んだ業者や、退去した親戚・知人に渡したままの合鍵が実家のどこかに残っていないか、心当たりを一度洗い出しておくと、後から不安を感じにくくなります。
なお、賃貸住宅の場合は鍵を勝手に交換できないことがほとんどです。費用負担や手続きは管理会社・大家さんとの相談が前提になります。賃貸ならではの制約と工事不要の選択肢は賃貸の実家見守り、工事不要でできることで詳しく扱っています。鍵の交換を業者に頼みたい場合、出張対応の鍵交換サービスもありますが、依頼先は信頼できる業者かどうかを事前に確認してから進めてください。
来訪者への応対を整える
もうひとつの柱が、玄関先に来た人への応対です。音だけのインターホンでは、相手が誰なのか声だけで判断することになり、身構えにくい面があります。モニター付きのインターホンに交換できれば、応対する前に相手の姿を確認できるようになり、判断の材料が増えます。
最近は、来訪があったときにスマートフォンへ通知が届き、外出先からでも応対できるタイプのインターホンもあります。ただし通信環境や設定の手間が増える面もあるため、まずは「顔が見えるかどうか」を優先し、必要に応じて検討する程度で十分です。機器を替えるだけでなく、日々の習慣も見直しておきたいところです。ドアを開ける前にモニターやドアスコープで相手を確認する、知らない相手なら無理に応対せず居留守という選択肢を取ってよい、という考え方を親と共有しておくと、いざというときの判断がしやすくなります。あわせて、玄関の見えるところに家族の連絡先を貼っておき、「迷ったら電話して確認する」という流れを作っておくのもひとつの方法です。インターホンをカメラ付きのものに替えることに抵抗を感じる親もいるので、その場合は親がカメラを嫌がるときの考え方も参考になります。導入そのものについては、親の同意を得るためのポイントにあるとおり、本人の納得を前提に進めてください。
訪問販売・点検商法への備え
「点検に来た」「近くで工事をしている」といった名目で訪問し、不要な契約を勧める、いわゆる点検商法についての相談は、国民生活センターに継続的に寄せられています。同センターの公表によると、訪問販売によるリフォーム工事・点検商法に関する相談は2025年の1年間で5,544件寄せられました(国民生活センター「訪問販売によるリフォーム工事・点検商法」、2026年7月31日時点の掲載データ)。
家族としてできるのは、手口を細かく知ることよりも、「その場で契約しない」「一人で判断しない」という習慣を共有しておくことです。訪問してきた相手の話をその場で信じて契約書に署名する前に、家族に電話で相談する、という一手間を置くだけでも、判断を急がされる状況を避けやすくなります。契約してしまった後や対応に迷った場合は、消費生活センターに相談できる窓口があることも、あわせて伝えておくとよいでしょう。
宅配の受け取りを、対面に頼らない仕組みにする
インターホンが鳴るたびに玄関まで出て対応するのは、日常的に積み重なると負担になります。置き配や宅配ボックスを使えば、対面でのやり取りを減らせます。
価格・在庫は変動します。リンク先でご確認ください
親によっては「配達員に悪いから」と、これまでどおり対面で受け取りたがることもあります。その場合は無理に置き配へ切り替えさせるのではなく、「対面で受け取る回数を減らせるだけでも、来客対応の負担が下がる」という程度に伝えるほうが、受け入れてもらいやすいようです。郵便物や宅配の受け取り状況を見守りの手がかりにするサービスもあるので、あわせて郵便・宅配で見守るサービスも参考にしてください。
離れていてもできること
玄関まわりの対策は、離れて暮らしていても進められるものが少なくありません。補助錠やドアスコープ、宅配ボックスなどは通販で購入して実家に送り、電話やビデオ通話で取り付け方を伝えながら親自身に付けてもらう、という進め方ができます。玄関の開閉センサーを付けておけば、外出・帰宅のタイミングを離れた場所からも把握しやすくなります。
工事を伴う鍵の交換など、親一人では難しい作業は、帰省したタイミングでまとめて済ませてしまうのが現実的です。業者に依頼する場合も、日程の調整や立ち会いを家族が担えば、親の負担を減らせます。帰省の予定が立てにくい場合は、家族の誰かが日程を調整して業者の訪問に立ち会うだけでも、親が一人で契約内容を判断しなくて済むようになります。まずは鍵まわりと来訪者への応対のどちらが実家にとって優先度が高いかを、一度家族で話し合ってみてください。
まとめ
玄関の防犯は、鍵という物理的な防御力の問題と、訪問者への応対という日々の習慣の問題に分けて考えると、実家の状況に合わせて手をつけやすくなります。鍵の交換や補助錠、モニター付きインターホンといった機器での対策と、「出る前に確認する」「その場で契約しない」といった習慣づくりを組み合わせ、宅配の受け取り方も対面に偏らない仕組みに変えていく。どれも一度に終わらせる必要はなく、できるところから少しずつ進めていけば十分です。



